クリニックブログ

2014.11.16更新

 エボラ出血熱はエボラウイルスによる全身性感染症で、1976年にスーダン共和国南部 (現:南スーダン共和国) で初めて感染が確認され、これまでアフリカ大陸で10数回、突発的に流行していますが、感染したときの致死率は50~90%と報告されており、致死率が非常に高く恐ろしい感染症です。今回の流行は、2014年3月にギニアで発症したのを発端に11月現在でも西アフリカ諸国で感染が拡大しており、死者は4951人(11/1現在)となっており、これまでの流行とは桁違いに多い事態となっています。さらに今回、初めてアフリカ大陸外のスペイン、アメリカでも二次感染が認められ問題となりました。この話を聞いて思い出されるのは、『アウトブレイク』という1995年制作のアメリカ映画で、アフリカからアメリカに持ち込まれた非常に致死性の高いウイルスに立ち向かう人々を描いたサスペンス大作です。この映画は1994年に発刊された「ホット・ゾーン」という、当時エボラ出血熱の制圧に命を懸けた人々の姿を描いたノンフィクション小説が原案になっており、映画の内容はほぼエボラウイルス感染を想定した内容と言ってよいと思います。エボラウイルスはサルなどの動物にも感染し、サルからヒトに感染した例が確認されています。また最近、エボラウイルスの宿主はアフリカに生息するコウモリであることが明らかにされました。現地では、サルやコウモリの肉を食する習慣があり、感染との関連性が指摘されています。エボラウイルスは現在のところ、ザイール・エボラウイルス、スーダン・エボラウイルス、ブンディブギョ・エボラウイルス、タイフォレスト・エボラウイルス、レストン・エボラウイルスの5種類が確認されていますが、人間に大量の犠牲者を出しているのはザイール・エボラウイルス、スーダン・エボラウイルスで、現在のところ空気感染した例は報告されていません。しかし、サルを終末宿主とするレストン・エボラウイルスは、現状ではヒトに対する致死的な病原性はないとされていますが、このウイルスはサル-サル間での空気感染があるとされています。たとえば、トリインフルエンザウイルスは鳥類に感染して非常に高い病原性を示しますが、今のところ感染した鳥に接触することで人に感染することがあるものの、ヒト-ヒト間の感染は確認されていません。しかし、ヒトインフルエンザウイルスと混じり合って変異することで、ヒト-ヒト間で感染する能力を持ったウイルスに変異して、パンデミック (世界的大流行) を起こす可能性が懸念されています。エボラウイルスもヒト-ヒト間で空気感染する最悪のウイルスに変異する可能性は考えられ、映画『アウトブレイク』でもそれが示唆されています。できるだけ早くにエボラ出血熱に対する特効的な治療薬、予防法が確立することを望みます。

投稿者: おかだ内科クリニック

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